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【読後感】 世界屠畜紀行

世界屠畜紀行 内沢 旬子 / / 解放出版社

話題の本として新聞・週刊誌の書評欄を一時期にぎわせていました。
屠殺といえば「ドキュメント 屠場」。これ1冊でおなかいっぱい。それでも本作に興味を持ったのは、世界各地の屠場を実際に見て歩き、イラストに起こしているため。

期待を持ち過ぎたか、心地良い読後感は味わえず。

要因のひとつは、文章の稚拙さ。軟らかく書こうという意気込みなのか、元々こういう文章を書くひとなのか。自分を指して「ウチザワは思った」というような表現が随所に見られます。連載中はそれでも良かったのか効果が実感できたのかもしれません。が、こうして1冊にまとめると、目障り。
朝日新聞にニュース解説のコーナーがあります。知っているようで知らない、時事ネタの本質が書かれていて参考になります。そんなせっかくのコーナーですが、語尾の多くが「ござる」。猿が解説しているという無駄な演出のため。読んでいて「ござる」が目につきイライラします。それと同じような鬱陶しさを味わえます。

もうひとつの要因は、マッチポンプ。
世界各地の屠場を訪れるにあたり、食への意識や文化の違いとあわせて、職業差別についても聞き取り調査をしています。素直に「肉屋は嫌われる」と明かす国民もいれば、そんなこと考えたこともないという国の住民も。後者に対して筆者は求める回答を引き出すべく、職業差別が無いわけがないと質問を畳み掛けます。揚げ句、日本ではこれほど差別され虐げられているのだ、と比較対象としての日本の同業者を紹介します。そんな差別があるなんて信じられない!との反応に手応えを感じているような印象を受けます。

著者は世界各地の風俗習慣を我々に伝えてくれる半面、日本の暗部を世界各地にばらまきに行っているようなもの。野党の議員さんたちが「”従軍”慰安婦問題調査」と称して世界各地に出向いては問題を掘り起こし、得々と帰国する姿が重なります。図書館で借りました
 
by top_of_kaisya | 2007-06-18 23:51 | 読/見/観