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【読後感】 会社は誰のために

会社は誰のために 御手洗 冨士夫 + 丹羽 宇一郎 / 文藝春秋

連休中日、雨風強く、一日中暗~い日に読むにはうってつけの一冊です。

8月の北海道経済同友会例会は伊藤忠商事の丹羽会長の講演でした。
大所高所とはこのことか。と思わすほど高みからの物言いに、出端から「偉そうなおっさん」が刷り込まれてしまいました。近著のこの本については、印税は国際貢献団体に寄付されることになっている、との触れ込み。それなら買ってみようかと書店で立ち読みしてみれば、買うほどのものなのかなぁ、と先ほどの刷り込みが頭をもたげてくるのでした(苦笑)

元来、ビジネス関連の書籍は、読まないことにしています。主義、というほどしっかりしたものではありません。単に偉そうな物言いが気に食わないだけで。大方のビジネス書・経営指南書の類は、こうすれば社員はついてくる、こうすれば営業は伸びる、こうすれば売上アップ!
その通りにしてそうなるほど社長の仕事は簡単じゃあない!成功者ほど、成功の秘訣をひけらかしてくれますが、真似すれば成功できるわけがない。Woody Allenがインタビューで答えていたのを思い出します。「成功の秘訣は、運だ。もちろん努力は必要だが、結局は運だ。そんなことは皆わかっているんだ。でもそれを口には出せないだけなんだ」。

とりわけ本書のお二方の経営論に疑心暗鬼だったのは、キャノンに伊藤忠という巨大企業のトップの苦労と、地方地場の中小零細2代目若造社長の苦労とでは、性格があまりにも異なり過ぎて参考にできる部分が無い、共感できる部分が無い、読むだけ時間の無駄、かと。

でもせっかくなので、買ってまでは読まないけど、タダなら読もう、と中央図書館に予約を入れたのが先月9日。大通カウンターから入荷の連絡が入ったのが3日。4人の予約待ちでした。読んでみれば、3時間で読み終えました。

会社は株主のもの、とは村上ファンド華やかなりし頃の文句でした。丹羽会長は、会社が誰のものかといえば株主のものに決まっているけど「誰のためにあるのか」という視点が必要と説いてます。社会の公器であるという原点。従業員のため、お客様のため、社会のため、国家のため、と。
また、会社は「非民主主義」とも。最終決断はすべてトップであり、この点は野球監督に例えています。つまり次の代打にいちいち合議しないでしょ、と。それだけの権限を持つということは、それだけの責任を持つということです。
さらに丹羽会長、公共投資についても触れています。欧米並みに減らせという声が高まっているようだが、公共投資は雇用対策 = セーフティネットという側面も担っていて、欧米もセーフティネットと公共投資を合算すれば日本と同水準に達するということも考慮しなければならない、と。

こうしてみると、結構いいこと言うてはる(笑

御手洗会長の、事業部の壁を越えての連携「全体最適」の考え方も勉強になります。また「儲からない事業に命を賭けてもらっては困る」というのも。ただ、それでは儲かる事業にシフトするにはどうすればいいか。キャノンも伊藤忠も、儲かっていない事業がある一方で、順調に業績を伸ばしている事業部・子会社も持っているわけです。その点が、中小との大きな違い。

丹羽会長の「トップとは、孤独なもの」との言も、しんみりします…

図書館で借りました
by top_of_kaisya | 2006-10-08 19:05 | 読/見/観