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【読後感】 夜と女と毛沢東

夜と女と毛沢東 吉本 隆明 + 辺見 庸 / 文藝春秋

萌黄書店で衝動買いした古本ハードカバー3冊の3冊目。これまた文庫化されてました。結局3冊とも新刊文庫で買った方が安かったことに。

これも対談本です。昨日の対談のように「宗教」という柱を通してのものとは異なり、「中国」や「女性」などお題がひとつひとつ出されていて、それについてのおふたりの考えがかぶさります。書斎で考え込む吉本さんに対し、現場で見聞きしたことをもとに考える辺見さんというタイプの違いは、最後の章でぶつかります。

個人的には辺見さんは、10年前に「もの食う人びと」を読んだときは楽しめましたが、以降、理屈っぽい物言いが多く(元々そうであって「もの食う―」だけが異質なのかも)、作品を買ってまで読むことはありませんでした。

一方で吉本さんは、同時期に「共同幻想論」を読んで、よくわかりませんでした。ただ評判が極端に左がかった評論家ということで、遠ざけてはいました。

この対談で、辺見さんの理屈っぽさと現場を回った記者としての見聞の広さとの両面を再認識できました。また吉本さんに対する誤解もとけました。どちらかというと、吉本さんの言い分が意外に正論ではと思える場面も。

最後の章で寄せ場の話題が登場します。山谷に限られてますが、ここを単なる労働市場・日雇いの街ではなく、ホームレスの生き方についてどう捉えるか、で討論になります。この話題が出ることは知らなかったので、寄せ場学会会員としては嬉しくなりました。

ブッダの夢」では吉本さんの話題が登場します。この本では逆に、中沢先生の修行の話が出てきます。思いつきというか、噂話というか、軽くいろんなひとの名前があがるのも対談の面白さ。
 
by top_of_kaisya | 2006-08-20 23:50 | 読/見/観