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【読後感】 「感動」禁止!

「感動」禁止! ― 「涙」を消費する人びと ベスト新書 八柏 龍紀 / ベスト新書

「感動症候群」で引用されていた本です。その趣旨には全面賛成。タイトルも
簡潔。この記事が掲載されたのは新年早々でしたが、トリノ五輪でまたぞろ
「感動をもらいまいした」てな所感があちこちで垂れ流されているのに辟易して
いたところ。こういうときこそこの本だ!と読んでみたのです。

意外に、求めている「感動禁止!」節は数行。255頁の大半は、タイトルに関係のない世俗史。
伏線にしてはあまりにも大量・遠回し過ぎます。極端なところ「まえがき」だけで充分。
そんななかで、ミッキーマウスなどをして「かわいい」と幼少期から刷り込むことを「感動の
餌付け」と称し、遊びにおいても受動態をよしとするためTDLでも「遊ばせてもらう」ようになる
との分析はわかりやすいものです。

これが藤原先生調ならば「感動するのは理屈じゃない」ってところでしょうか。感動的なシーンに
立ち会えば、自然と涙が流れる。自発的なこと。勝手に涙しているのだから、御礼を言う筋合い
ではなかろうに。「勇気をもらいました」も同様。がんばっている姿を見て、よし自分もがんばろう
と奮い立つのは、私の勝手。いつから感動とか勇気とかってあげたりもらったりできるものに
格がさがったのだろう、と考えるにはよい一冊です。こういうテーマを取り上げる本は少ないし。
取り上げるのが難しいから、こんなに伏線だらけでいっぱいになるのも現実なのでしょう。

ところで私個人は、起き抜けの「めざましテレビ」で「きょうのわんこ」に涙します。ひと泣きしてすっきりして、それから洗顔・歯磨きに移行します。別段、犬に御礼は言いません。
先週、行きつけのカフェ・エスキスで店置きの「BRUTUS」をめくっていたところ、動物園特集に行き当たりました。中国四川省は臥龍のパンダ園。子パンダの愛らしい写真を眺めながら癒されていたら、店主から顔が緩んでいることについて指摘されました。
私の荒んだ毎日は、犬やパンダしかわかってくれません。
 
by top_of_kaisya | 2006-03-12 12:00 | 読/見/観