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【読後感】 公共事業が日本を救う

公共事業が日本を救う 藤井 聡 / 文春新書

「公共事業は無駄」で世論が統一されている昨今。
その論調をリードしているのはメディアなんだけど、その根拠(データ)はたいてい、恣意的に作り上げられたもの。
海外と比較してもこんなに日本の公共事業は無駄遣い!という棒グラフは、出展年次や統計元が入り乱れていたり。
そういうのはあとで指摘しても、言ったもん勝ち。電波に乗っちゃったり、新聞が配達されちゃったら、あとで「若干異なるデータが入っておりました。申し訳ございません」なんて数秒頭下げたくらいで消せるもんじゃない。

八ッ場ダムの治水効果は、降雨がダムの上流に集中したかどうかで異なるはず。
当然下流に降ったってダムの効果はありません。でも上流ならダムで調節できます。
そんな当たり前のことを、下流データばかり持ち出して「ほら!ダムは要らないんですよ!」って言われても。

大型貨物船が入れる港が日本に無ければ、船は周辺国を頼りにします。
道路を作るのに外国と比べて金がかかり過ぎ、って、トンネルや土地買収費用などをみればこれが適正価格。砂漠に道とおすのとは国土の事情が違う。
そして、よく言われることだけど、橋は手を抜けば、落ちる。

公共事業に携わっていなくても、言われてみれば確かに、というデータを並べてくれました。
この本1冊で公共事業不要論は覆ります。残念なのは、この本の内容をメディアが伝えないこと。

本書は民主党政権になっての「コンクリートから人へ」に危機感を持って書かれています。
半年後に、東日本大震災が発生します。
本書で構造物の耐震性について触れています。河川の氾濫も、公共事業の必要性の中で取り上げています。
このたびの震災にあたっての、公共事業の役割をまた筆者には論じてもらいたいもの。
100年に一度の災害のための予算は無駄、と仕分けした方々は読まないだろうけど。
図書館で借りました
 
by top_of_kaisya | 2011-10-05 15:01 | 読/見/観