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【映画】 赤い天使


2月のベルリン国際映画祭で寺島しのぶが最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞した「キャタピラー」が本作に似ているのではないかということで、観ておきました。

昭和41年の作品。終戦から21年。現在から21年遡れば、平成元年。亡くなった小渕首相が官房長官で、元号変更を発表していたのを私らの世代ならよく覚えているようなもので、21年なんてのは割と最近。
リアリティーは、監督が当時をよく記憶していたり思い入れがあったり、だけでは半減します。役者・スタッフの大半で記憶を共有してこそ。

腕や脚を切り落とす音。迫撃砲の炸裂する音。現在なら凝り過ぎて、現実感からかえって遠ざかります。
暗号文を飲み込んだため、中国兵に胃を裂かれて絶命した通信兵。中国に気を使う現在なら、存在しないことになっている役柄でしょう。
「キチガイ」「カタワ」。現在では自粛されます。代用される言葉が、さらに現実感を遠ざけます。
これらによって、本作は完璧な反戦映画になります。非常に後味の悪い映画です。若尾文子が妖艶だとか増村保造監督の才能発揮とか、その辺は見終わったところで思い出します。

蠍座にて
by top_of_kaisya | 2010-05-23 12:20 | 読/見/観