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【読後感】 思考停止社会

思考停止社会 「遵守」に蝕まれる日本
 郷原 信郎 / 講談社現代新書

談合事件とかコンプライアンスの問題とかいうと登場するえぇかっこしぃの元公取ってのがいますが、著者は常に視点を替えて見ます。曰く、その法令の先に何があるのか。
以前の著書で、その概要を説明されました。本書はその事例集に位置付けられましょうか。
不二家はそこまで悪いことをしたのか?伊藤ハムで食中毒が出たのか?伊藤ハムが糾弾された水質は、法令違反でもなければ国際基準をはるか下回る数値。それでも公開しなかったという「不作為」、つまりみつかったから報告という手順前後が「隠蔽」にあたると、マスコミこぞって吊るし上げたわけです。
落札率を1%でも上回ると「談合の疑いアリ」とする誰かさんの基準に似てますね。

耐震偽装ですぐにでも建物が崩れる印象を与えたが、基準法改正直前の建物はそれではすぐに倒れるのか?
村上ファンドで”利益を追求する姿勢に慄然とする”って、商売なんだから当然なのに裁判官はそこを見るか?
そのほか裁判員制度、社保庁まで、そういわれればそうか、という問題点の羅列。行き着くところは、マスコミ。とりわけ内部調査ですべてを公開したら厳罰を食らった「あるある大事典」と、不二家を散々こきおろしておいて実は捏造だったのに逃げ切った「朝ズバッ!」とを比較して、その影響力を示しています。今ならさながら岐阜県庁裏金問題でウソ証言を垂れ流した「バンキシャ!」が槍玉でしょう。

日本における法令というのは、一般的に裁判所が身近でないように、そうそう適用されるものではなく、できるだけ慣例に則るか、話し合いで済ませるものは済まし、それでも尚、というときに出張ってくるもの。訴訟社会・米国の「文化包丁」に対して、神棚に祀られている「伝家の宝刀」と著者は例えています。それほど馴染みの無いものだからこそ、法令に直面するとただただひれ伏す=企業不祥事ならただただ謝罪することになります。これを著者は水戸黄門の印籠だとし、手打ちにするぞ!と言われてもいま一度、その印籠を直視してみましょう、本当にその法令が現実的に問題なのか考えてみましょうと提言しています。図書館で借りました
 
by top_of_kaisya | 2009-08-24 23:38 | 読/見/観