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【読後感】 貧民の帝都

貧民の帝都 塩見 鮮一郎 / 文春新書

東京養育院を中心に、日本の江戸末期から現在までの貧困を見通します。

実業家としての成功者・渋沢栄一の、もうひとつの顔がこの施設に現れます。会社経営者が慈善事業に取り組めば、搾取の贖罪と批判を受けるのは、ビッグイシューに携わってみてわかりました。事業規模は全然違うけど。この施設が移転を繰り返し、内容はともかく存在としての”お救い小屋”を維持できたのは、とにかくも渋沢の力と理念によるものでしょう。左の方々はそのように評価なさらないようですが。

著者が序章で「こわれそうな人間」、終章で「こわれかけた人間」と形容する困窮者が、「こじき」として見苦しいからと収容を受けることと、顕在化されずに放置されるのと。

先に読んだ「コスプレ」の読後感が悪いのは、女性著者が「オンナ」の目で同性を蔑視し、日本を卑下する論調によるもの。本書も、チラチラとイデオロギーが入るのが気になります。でも一気に読めたのは、史実をひもとくところにイデオロギーの入り込む余地は無く、ただただ史実としての貧困が存在していたため。明治維新の一時期、東京が無政府状態に陥り、江戸城が「こじき」に乗っ取られた史実は、明治新政府の歴史では隠されがちです。図書館で借りました
 
by top_of_kaisya | 2009-07-12 16:35 | 読/見/観