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【読後感】 絶対貧困

絶対貧困 石井光太 / 光文社

物乞う仏陀」の著者です。
フィールドワークを重ねた方にはかないません。

インドで路上生活をしている老女が癌でどんどん衰弱しているところへ伝統薬売りがやってきます。
この章ではこの職業、いかがわしいし効果も無い呪術師と同列に登場します。
この薬売りの男性、「お金はいらないよ。ただ、治ったら食事でもご馳走してください」と、なんの縁も無い老女を無料で看病します。
やがて老女は亡くなるのですが、昼から翌日の明け方の臨終まで、手を握って看取ります。その後、家族から1杯だけ食事をご馳走になり、去ります。その献身ぶりを著者が尋ねると「わしが薬売りだからだよ。薬売りというのは病気の人を助けるために存在しているんだ。もし治せないなら心の平安を与えてあげればいい」。

タンザニアの「路上の産婆」は、無料で路上生活女性の分娩を助けます。お金を取らないのは「アフリカでは、みんなお金を目当てに戦争をしたり、虐殺をしたりしている。私は赤ちゃんが生まれてくる時ぐらいはお金に関係なくやってあげたいのさ。生まれた時から赤ちゃんをお金の毒にさらしたくないんだよ」。

スラム・路上生活・売春の3章立てで、世界中の貧困を生々しく明るく紹介しています。
あえて悲観的に、美談にしたてあげようとするマスコミや、その毒気にあてられた正義感の強いNGOには求められない事例がどんどん出てきます。そのなかに、こうした素晴らしい言葉を口にできる貧者がまぎれています。
図書館で借りました
by top_of_kaisya | 2009-05-22 23:36 | 読/見/観