人気ブログランキング | 話題のタグを見る

【読後感】 倒産社長、復活列伝

倒産社長、復活列伝 三浦 紀夫 / 草思社

図書館で借りました。縁起でもない本ですが、1日で読み切れるほどの余裕がまだあったのだなぁ、と再確認できました。自殺したくなったときに自殺の本を読んで考えを改めたような効果。

私がビジネス書や経営指南の類の本を読まないのは、大方が独善的に思えるためで。読んで感銘を受ける経営者もいるでしょうし、だからこそ書店はビジネス書のための棚を充実させています。しかしその多くは、「こうすれば業績が伸びる」「これで社員のやる気が出る」と大風呂敷を広げる割に、ありきたりの話、「それで儲かれば苦労するかよ」で終る内容。著者が経営をアドバイスするだけで実際に経営したことがなかったり、よしんば経営者の著書でも成功してしまった社長だったり、が大半です。それが独善的になる要因かと。経営コンサルタントは所詮他人事、勝ち組はなんとでも言えます。当社の業種・業界や私個人が抱える問題にヒントを与えてくれるビジネス書には、出会ったことがありません。そういえば先日「おたくの会社の業績を上げてやる」と大見得切っていた近所のおっさんも、姿を消しました。

本書に関心があったのは、成功者とは真逆の経営者を取材しているところ。厳密に言えば一旦成功をおさめながら、倒産の憂き目にあい、そこから「復活」した方々。倒産の仕方も様々。これも厳密に言えば、倒産ではなく事業譲渡などを含んでいるため、全員が悲惨な生活に追い込まれたわけではありません。あ、この倒産 = 悲惨という図式自体が先入観であることも本書で著されています。

とはいえ、これまた結局は「復活」した社長たちの話。現在はまた社長をやっていたり作家や議員になったりと多様な仕事に行き着いていますが、倒産した頃を懐かしめるほどに「復活」しています。みなさん失敗しても前向きに捉えているのが共通しています。これこそ「復活」できる資質。殆どの失敗経営者が、死を選んだり(実際に自殺を考えた方も登場しますが、思いとどまるきっかけが家族など、救われる余地があります)、寂しい晩年を過ごすのも事実。その点で先述の成功者の弁と似た読後感に見舞われます。結果オーライかよ、と。

家族が支えてくれた、死ぬ間際にパチンコをしたら当たった、友人が資金を援助してくれた、などなど復活の要素もドラマティック。読み物としてはとっても楽しめます。でも経営者としては一度たりとも倒産したくないし、倒産が怖いから、メタボリックな肉20kgと引き換えにがんばっているわけです。

図書館で借りました
by top_of_kaisya | 2006-12-11 23:25 | 読/見/観