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【読後感】 あったかもしれない日本

あったかもしれない日本 ― 幻の都市建築史
    橋爪 紳也 / 紀伊國屋書店

3連休。勢いで4冊目です。昨年、各新聞書評欄で絶賛だった本です。中央図書館では、都市計画の棚に入っていました。

橋爪先生の書かれた文章はあちこちで読みました。母校に移られる前から。でも書籍としては「南海ホークスがあったころ」が初めて。それも共著なので、先生の著書としてはこれが初めて。

内容は、かつてこういう計画が日本にあった、というもの。実現不可能とわかっている(当時は)SFの世界も混じります。日本から朝鮮半島を抜けて大陸と結ぶ弾丸列車構想。槍ヶ岳の山自体を”足袋”の広告看板に。そういう話にも触れてはいますが、ほんの一部。あとはさすがに都市文化の専門家。割とロマンからは離れていきます。

確かに戦前の東京オリンピックや万博が開かれていたらどうなっていただろう、とは思います。その計画の話にはずいぶんページを割いています。
明治新政府になって、官庁街をどのように作ろうかという計画に腐心した話は最初に登場します。
後半は建築のコンペ作品の紹介です。優秀作はこんなんだった、これが作られていたら、という話になればテーマから外れてはいませんが、読み物としては興がそがれます。
コンペといえば前川國男建築展でもコンペで落とされた作品が多く展示されていました。建築の分野では素人ですので、どうして落選したものを堂々と見せるのか不思議でしたが、その発想に注目してほしい、ということと理解します。本書にも前川先生の話は時折登場します。

でも土木を齧った者としては、壮大な土木構想に関心が。明治の琵琶湖大運河の話は初めて知りました。現代でも千歳川放水路のように海と海とを河川を使ってつなぐ計画が立てられます。この手の構想は、いつの時代も幻になりがちだとわかります。

名古屋駅の屋根を飛行場にする話も、突拍子もない構想に思えますが、当時の航空法では実現不可能ではなかったとか。そういうおもろい小噺みたいのを期待していたのですが、それなら「トリビアの泉」でも読みなさい、ということでしょう(笑)

図書館で借りました
by top_of_kaisya | 2006-10-09 23:59 | 読/見/観