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【読後感】 シベリア抑留

シベリア抑留―未完の悲劇 栗原 俊雄 / 岩波新書

読みたかったこの本が図書館から届いたのが、不法占拠している北方領土にメドベージェフ大統領が訪れた事件の直後。

本書の内容は、取り立てて目新しい点は無いでしょう。多分。
でもシベリア抑留についてまとめた本をよく読んでいない私にとっては、驚くに充分。

馬糞に混じっている未消化の麦の粒を食べる。
食事中にスプーンを持ったまま、死ぬ。
そのほか過酷な状況一切は、これまでもあちこちで語られてきたかと思います。

旧ソ連がいかに酷いことをしてきたかは、大まかなところ理解しているつもりではおりました。
それをもってロシア人を憎む。短絡的かもしれませんが、過去の所業は忘れるべきではない。
そうそう、だから日本が中国でやったことを忘れまじと反日運動が続いているのよ、とつなげるひともいます。
日本が降伏したと知るや中立条約を破棄して攻め込んだ(日本も状況によっては破棄する用意をしていたと著者は触れていますが、これはバランスを保つにもよい情報かと)。
捕虜を奴隷として扱った。
不法占拠を続け、開き直る。
現在に至るまでぶれない国とは、事情が異なります。
ガスが出たから尖閣諸島は俺のものとヤクザまがいにからんでくるのとも、違います。

本書では、思想教育が功を奏し、引き上げ船から家族のもとに戻らず共産党の活動に直行する場面も描いています。
シベリア抑留でかわいそう、で終わりがちな話を巻き戻してくれます。
多分、あちこちで書かれた内容ではありましょうが、適度に忘れた頃に、こうした本が新しく出されることは、それ自体に意味があります。

ロシアが日本を乗っ取る際、よもや九州から入ってくることはありません。
北海道が真っ先に占拠されます。
有事を考え、大学では第二外国語にロシア語を選びました。
ところがロシア語を勉強していた者から処刑された歴史も、本書でひも解かれています。
図書館で借りました
by top_of_kaisya | 2010-11-16 23:17 | 読/見/観