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【読後感】 日本の路地を旅する

日本の路地を旅する 上原 善広 / 文藝春秋

4年半前、「被差別の食卓」を読みました。同じ著者とは知らず。食へのこだわりは、当時よりも抑え気味に。タイトル通り、「旅」の本です。

「路地」とは、部落を指します。中上健次がそう呼んだのだそうです。一般的には、路地裏の「路地」を想起します。書名からは、各地の路地裏を散歩して、知るひとぞ知る穴場をみつける本、のような。穴場も登場します。昔貧し過ぎて、洞窟で暮らした被差別部落の人々の「穴」場。

私小説風なのが、著者の行き詰まり具合を思わせます。前掲書のような、食べ物という切り口でもなく。全国各地の被差別部落”だった”地区を訪ねます。差別・被差別意識が薄れている現実を、住民を通じて知ります。行政が目指した方向に向かっているとは、いえます。結婚のときだけは持ち出される、年配者の世代が持ち出してくる、といった辺りが、最後に残った解決の難しさ。

部落だから、差別される。それが潜在化してしまうと、同和事業の効果も計れません。結局、解放されたのか、どうしたらいいのか、を描く手法をみつけるのに、著者が困惑している感が。

路地に辿り着くのに、行き当たりばったりなところがあります。
浅草では、間違って場違いな縁結び神社で寛いだり。
山口では、猿まわしの「村崎太郎」も登場します。
長崎の浦上四番崩れは、「ナガサキ…」では被害に遭った信者の側で書かれています。本書では、その先導に立ったのが部落民で、後に信者から逆襲されるという、信者側からは一切触れられない歴史を追っています。

「ハンナン牛肉偽装事件」は、岐阜県内の会社です。いとこがよく知っていて、法事で岐阜に行った際、周辺事情を教えてくれました。こういうやりとりで、本書は書かれたものと。図書館で借りました
 
by top_of_kaisya | 2010-02-26 12:01 | 読/見/観