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【読後感】 学歴・階級・軍隊

学歴・階級・軍隊 ― 高学歴兵士たちの憂鬱な日常
 高田 里惠子 / 中公新書

戦時中の高学歴者を、旧制高校から一高に絞り込んでいきます。
彼らのエリート意識と、兵営における「異質なものとの接触」による反応が、本来の本書の中軸でした。が、引用文献の多さと、それぞれを考察するとそれぞれがそれぞれ独自の解釈を導いてしまう為、まとめるのが大変。だから新書なのに300頁も費やすわけです。

導入が、たまたま在学徴集延期措置の廃止時期に当たってしまった、今となっては不運としか言いようのない方々が次々登場します。
これについては会長も、戦争がもっと長引けば該当した、という話をしていますし、先般亡くなった叔父には徴兵保険(5円)がかけられていたことが、逝去時にわかりました。
ちょうど現在無言館「祈りの絵」展が札幌で開催中。「きけわだつみのこえ」も一筋縄では読み込めない実態が、本書で詳らかにされています。

世が世なら帝大出で悠々と暮らせたのが、繰上げ卒業・出征・戦死。その彼らの親世代が同じコースを歩んで大卒の身分を充分に生かしたのが、皮肉になります。
あとがきでロスト・ジェネレーションの話題が顔を出します。最近の、格差を糾弾する30代の論客は、たまたま景気が悪い時期に就活だったために正社員への道が閉ざされた、と。
図書館で借りました簡単に並べることはできませんが、でも構造はよく似ています。
 
by top_of_kaisya | 2009-10-03 14:56 | 読/見/観