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【読後感】 オオカミ少女はいなかった

オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険
 鈴木 光太郎 / 新曜社

大阪で学んだことのひとつに「おもろければ事実になる」があります。
幸い、それによって迷惑をこうむったことはないし(学生期間だけのことなので)、おもしろい話で盛り上がれるのはよかろうと(当時の札幌の人々はつまらないふりをする風潮があった)。そこには1次的な要素、つまり「こいつ、こないだな」で始まる取っ掛かりがあり、当事者は笑いながら否定する機会が与えられ、聴く側も「ほんまか」と突っ込みつつも作り話(脚色)を見抜く力を持っていることで大事に至らないわけです。

でもそれが科学的な裏づけがあって(あったことにして)、メディアが食いつくと、虚報になります。「都市伝説」なら、ありそうで無さそうな笑い話で済ませられるところ、心理学の土俵に乗っかって、数値的に実証されちゃって、さらに実験者が死んじゃってとなると取り返しがつきません。

本書はそうした「神話」化した事例を紹介し、片っ端からそのありえなさを論破しています。
表題の狼に育てられた女の子の話は、つい最近観た「ミーシャ」と同じような状況です。白い狼に肉を分けてもらったのが作り話というのは、映画化において著者が告白しております。でもありそうな話だよ、ほら、昔「オオカミ少女」っていたじゃない?狼に育てられたから人間の生活に順応できなかったらしいよ、と、誰もが引用したことでしょう。図書館で借りました
 
by top_of_kaisya | 2009-08-03 11:55 | 読/見/観